西太平洋上の大気中メタン濃度、エルニーニョで大きく変動
:国立環境研究所

 (独)国立環境研究所は7月21日、二酸化炭素(CO2)に次いで地球温暖化に大きな影響を与えているメタンの大気中濃度が南米ペルー沖のエルニーニョ現象(海水温の異常上昇)や大気循環の変化によって大きく変動することを世界で初めて発見したと発表した。民間の定期貨物船の協力を得て進めてきた16年間にわたる海上での観測データを解析して突き止めた。
 同研究所地球環境観測センターの寺尾有希夫研究員らの研究グループは、観測の空白域とされていた西太平洋を定期航路とする日本郵船などの民間貨物船に測定器を積んで1994年からデータを収集してきた。
 観測によると、メタン濃度の全体的な変動傾向は、西太平洋以外の観測ネットワークで観測されている全地球的な変動と一致している。
 この観測データを使って大気輸送モデルで計算した結果、1997年中頃に観測されたメタン増加は、この年に発生した強いエルニーニョ現象に伴って風の状態が変化し、東南アジアから大気の塊が運ばれたことが影響したことが分かった。この年、インドネシアでは大規模な森林火災が発生しており、そのために増加したメタンを捉えたとみている。
 一方、2007年には、全地球的な傾向とは反対に熱帯西太平洋ではメタン濃度が減少したが、これは南米ペルー沖のラニーニャ現象(海水温の異常低下)に伴って西太平洋に強い上昇気流が発生、メタン濃度の高い地表付近の空気の塊を上空に運んだことが原因ではないかということが示唆されたという。

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