(独)農業・食品産業技術総合研究機構の果樹研究所は12月8日、ミカンに多く含まれるβ-クリプトキサンチンなどのカロテノイドの血中濃度と喫煙・飲酒習慣とに新たな関連があることを発見したと発表した。
果物や野菜には、β-カロテンやβ-クリプトキサンチンなどのカロテノイドが多く含まれており、果物や野菜をたくさん食べる人ほどカロテノイドの血中濃度が高くなると考えられている。
カロテノイドとは、自然界に広く分布する天然色素の総称。食品の中に含まれる主要なカロテノイドとしては、ミカンなどに含まれるβ-クリプトキサンチンなど6種類がある。この内、β-クリプトキサンチンなどは、体内に吸収されてビタミンAになる。カロテノイドは、いずれも強力な抗酸化作用を持つことから生活習慣病の予防に有効ではないかとみられてきた。
一方、喫煙・飲酒は活性酸素の発生源となり、生体に対して酸化ストレスを引き起こすことで、がんや心血管系疾患などの生活習慣病の原因の一つと考えられている。
同研究所は、静岡県浜松市北区三ヶ日町の協力を得て、「三ヶ日町研究」と呼ばれる栄養疫学調査を実施してきた。この調査は、ミカンなどに含まれるカロテノイドが健康に及ぼす影響を疫学的に明らかにすることを目的としており、調査に協力している1,073人の住民を対象に、毎年継続して追跡調査を行っている。
今回の調査では、住民を喫煙者と非喫煙者(たばこをやめた人を含む)で分け、さらにアルコール摂取量から[1]非飲酒群(1日当たり1g未満)、[2]軽度飲酒群(1g以上25g未満)、[3]アルコール常用群(毎日25g以上)に分け、6群の血中濃度を調査した。
その結果、飲酒や喫煙と血中カロテノイド値との関係が、カロテノイドの種類によって異なることが今回初めて明らかになった。飲酒も喫煙もしない人たちに比べて、喫煙習慣のあるアルコール常用者では、様々な疾病に関与していると見られる酸化ストレスが増大し、β-クリプトキサンチンなどのカロテノイドの血中濃度が著しく低いことも分かった。このため、喫煙習慣のあるアルコール常用者では、カロテノイドを豊富に含む果物・野菜の摂取がより重要である可能性が示唆された。
この研究成果は、英国の栄養学専門誌「British Journal of Nutrition」の2009年10月号に掲載された。
No.2009-49
2009年12月7日~2009年12月13日