J-PARCで「中性K中間子」の生成を確認
:高エネルギー加速器研究機構

 高エネルギー加速器研究機構は12月7日、(独)日本原子力研究開発機構と共同で東海村(茨城)に建設した「J-PARC(大強度陽子加速器施設)」のハドロン実験施設(原子核・素粒子実験施設)に設置した「KLビームライン」からの二次粒子ビームの中に「中性K中間子」が生成されていることを確認したと発表した。
 これを確認した実験チームは、J-PARCが作り出す大強度のビームを用いて中性K中間子が数百億回に一度、中性π(パイ)中間子と2つのニュートリノに崩壊する非常に珍しい現象の発見を目指しており、同機構や、阪大、京大など国内6機関と米国、ロシアなど4カ国の研究者合わせて60人余りが参加している。
 KLビームラインは、電磁石で電荷を持つ粒子を取り除いた中性粒子だけを扱うビームライン。実験チームは、口径を絞った“ペンシルビーム”と呼ばれるタイプのラインを作り、今後の実験に備えて、ビームの性質を調べる準備実験を進めてきた。
 中性K中間子は、通常の方法では直接計測できないので、この粒子の崩壊で生じた二次粒子(電子を持つπ中間子とガンマ線)を検出器で捉え、解析によって元の粒子の質量を求めた。その結果、中性K中間子の質量に当たるピークを確認した。
 今後、さらに測定を続けて、統計精度を向上させ、ビーム中の中性K中間子の生成量と運動量分布を求めていく。今回の中性K中間子の生成確認は、J-PARCでの素粒子と原子核の実験が着実に進展していることの表れといえる。

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ハドロン実験施設の内部(提供:高エネルギー加速器研究機構)