有毒な鉛含まない新高性能圧電材料の開発に成功
:物質・材料研究機構

 (独)物質・材料研究機構は12月10日、有毒な鉛を含まない新しい高性能圧電材料を開発したと発表した。新材料は、「チタン酸ジルコ酸バリウムカルシウム(BZT‐BCT)」といい、50年間にわたって使われ続けている現用の鉛圧電材料「チタンジルコン酸鉛(PZT)」の性能を凌ぐ。同機構は、「世界初となる環境に優しく、かつ高性能の非鉛圧電材料の開発に成功した」として、既にこの新材料と製造方法の国際特許出願を終えている。
 圧電材料は、たたくと電圧が発生し、逆に電圧を加えると伸縮する性質を持った材料のこと。PZTは、最も高性能なその代表選手で、携帯電話、パソコン、テレビ、自動車など様々なハイテク製品に広く使われている。しかし、PZTは、有毒な鉛を多量に含むことから、近年は環境や人体への影響が問題視され、厳しく規制されつつある。
 このため、PZTに代わる非鉛圧電材料の開発が世界的に喫緊の課題となっているが、多くの研究努力にもかかわらず、非鉛圧電材料の圧電特性はPZTに遠く及ばず、「鉛は高い圧電特性に必須」とする見方が国内外で常識化しつつあった。
 今回の成果は、その壁を破り鉛追放が可能なことを示したもので、チタン酸ジルコン酸バリウムとチタン酸バリウムカルシウムの固溶体(互いに溶け合い、均一になった状態)を作って実現した。
 圧電材料で最も重要な特性は、圧電性の大きさを表す圧電定数。新圧電材料BZT‐BCTの圧電定数は、従来の非鉛圧電材料より2倍から数倍も大きく、これまでに作られた各種PZTの中で最高の圧電特性を誇ってきたソフトPZTをも超えることを確認している。
 また、電圧を加えた時の変形量(逆圧電効果)も大きく、全てのPZTを上回っている。
 同機構は、この高性能非鉛圧電材料の発見により、「世界的規模でPZTの代替に拍車がかかる可能性が期待される」といっている。

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