(独)産業技術総合研究所は11月9日、九州大学、大成基礎設計 (株)、 (株)ロジカルプロダクトの協力を得て、橋や建物などの構造物のコンクリートの亀裂の形状や進み具合などを力学的な刺激で発光する応力発光センサーで可視化したモニタリングシステムを世界で初めて開発したと発表した。目に見えないコンクリートの歪みなどが目で分かるので、構造物の保守点検・維持管理への応用が期待される。 我が国の橋、トンネル、高速道路、高層ビルなどの多くは、高度経済成長期に建設されており、今後10~20年の間に次々と耐用年数を超える。これらの構造物の異常や劣化を早期に発見できれば、早めに補修することで安全性を保ち、長持ちもさせることができる。これまでにも、土木分野の損傷診断システムとして、線状の金属箔の変形による電気抵抗の変化から歪を換算する歪ゲージや、外力によるガラス光ファイバーの変形で光の通り方が変ることから歪を知る方法が使われてきた。 しかし、これらの手法では、全体を測定するのに多数のセンサーを必要とし、実際に亀裂が生じたりするとセンサー自身が断線して検知不能になったりする問題があった。 今回、産総研は、1990年代後半に同研究所が発明し、その応用開発などを進めてきた応力発光体(粉末状セラミック微粒子)を含む塗料を構造物表面に塗る形で用いるセンサーと、一連の関連器材によるモニタリングシステムを開発した。塗料を塗ったどこかで応力集中があれば微粒子が発光しリアルタイムで見える一種の画像として歪情報が得られる。 建造から50年経過する交通量の多い橋でシステムの有用性、有効性を検証したところ、大型車両の通過時でも応力光を検出、その画像から橋の亀裂の形状と挙動を可視化したら、目では見えない微小な亀裂も応力発光でその存在が分った。近くの工事で異常な力が建物に加わった時にどんな歪を受けるかとか、微小な亀裂が気温の変化と共にごく僅かだが変化する劣化の検出もできた。 同研究所は、今後、ユーザーとの連携で各種の実証試験を実施し、応力発光現象の学問的体系化、応力発光による計測技術の規格化、標準化を目指すことにしている。 詳しくはこちら |