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わかる科学

顔を見ただけで信頼できる人かどうかわかるものなのか

(2026年1月01日)

 高齢者ほど特殊詐欺にだまされやすい?多くの人は、このようなイメージを持っているかもしれませんが、それは間違いかもしれないという研究が行われました。

 東京大学大学院人文社会系研究科の 鈴木 敦命 准教授、帝京大学文学部心理学科の 石川 健太 講師、専修大学大学院文学研究科の大久保 街亜 教授の研究グループは、心理実験を行って、「人を見る目」の世代間差を明らかにしました。

 他者がどれほど信用できるかの判断は、まず相手の顔から感じる印象です。とくに初対面の人に対する判断は、顔が大きな決め手となるでしょう。

 この研究では、「顔による信頼性判断」に世代間の差が存在するかどうかについて検討されました。研究グループはゲーム(経済分野)で協力的に振舞った人と非協力的だった人、及び汚職によって有罪歴が分かっている男性政治家の顔画像を見せて、若年層と高齢層の間で、信頼性の判断がどの程度違うかを比較しました。

 実験では、18~30歳までの若年層と65~80歳の高齢者が行う信頼性判断と、そこに働くバイアス(偏り)の比較を行うため、多数の被験者に顔画像を見せて、信頼できるかどうかを答えてもらいました。また、真顔を見せた場合(実験1)及び真顔と笑顔の両方を見せた場合(実験2)に分けても比較しました。

 その結果、ゲームで協力的だった人よりも非協力的だった人を信頼できないと判断する正確性は、実験1 では高齢者の方が若年者よりも高く、実験2 では両者とも同程度でした。また「信頼できない」という判断をしやすいネガティブなバイアスは若年層の方が多かったといいます。さらに、笑顔を見せた場合はネガティブバイアスが弱まることもわかりました。

 また、イギリス人に汚職経験のあるアメリカの政治家とそうでない政治家の顔を見せたところ、高齢者の方が若年層よりも正確に識別できたそうです。

 これらの心理テストの結果、研究グループは、高齢者が他者の信頼性を顔から過

剰に肯定的に見積もっているというステレオタイプな通説は、まちがっているのではないかと結論づけています。

 いずれにしろ、顔だけを見て決めつけるのはよくない、ということかもしれませんね。

 

【参考】

■東京大学プレスリリース
「人を見る目」の世代間比較

サイエンスライター・白鳥 敬(しらとり けい)
1953年生まれ。科学技術分野のライター。月刊「子供の科学」等に毎号執筆。
科学者と文系の普通の人たちをつなぐ仕事をしたいと考えています。