透明金魚を用いてマイクロプラスチックの取り込みを可視化
(2026年4月15日)
私たちが廃棄したプラスチックが適切に処理されればいいのですが、使用している量が膨大なために、一部が自然界に漏出しただけでも、川の流れに乗って海にまで達したものが大きな問題になっています。太陽光に含まれる紫外線を浴びて劣化し、海の波にもまれるうちに5mm以下のマイクロプラスチックとなり、海を漂ううちに海洋生物に取り込まれ、悪影響を及ぼすと心配されているのです。
特に魚類がマイクロプラスチックを取り込みやすいと言われていますが、魚がどのように取り込むのかは、これまで解剖しなければ調べることはできませんでした。しかし、従来方法では体内のどこにマイクロプラスチックがあるかを確認できても、解剖した時点で魚を死なせてしまうため、時間とともに変化するマイクロプラスチックの挙動を捉えることは不可能です。
そこで静岡大学創造科学技術大学院の徳元 俊伸(とくもと としのぶ)教授らの研究グループは透明金魚を利用することにしました。通常の金魚は色素を持つため、体内を見通すことはできません。研究グループは遺伝子に変異を起こさせるN-エチル-N-ニトロソウレアという物質を用いて、銀色の色素を作らせないようにすることに成功。成長とともに別の白色の色素ができるため、成魚になると半透明になるものの、幼魚のうちは透明な状態が維持されるため、解剖することなくマイクロプラスチックの挙動を観察することができるでしょう(図1)。

Toxicology Mechanisms and Methods, Bashar et al. (2026)より改変
そこで蛍光標識を施した、直径2マイクロメートル(1マイクロメートルは100万分の1メートル)のプラスチック粒子(蛍光標識マイクロプラスチックビーズ=FMP)を水中に漂わせた水槽で、ふ化後1カ月の透明金魚を飼育し、FMPが取り込まれる様子を28日間、観察しました。その結果、FMPはエラから取り込まれ、蓄積することでエラ組織を傷付け、最終的に金魚を死なせることが明らかになりました。エラ組織を詳しく観察すると、FMPを取り込んだ金魚のエラは表面の粘膜が剥がれるだけでなく、細胞も失われて軟骨細胞だけになっていたのです(図2)。

Toxicology Mechanisms and Methods, Bashar et al. (2026)より改変
マイクロプラスチックの影響が指摘されていながら、影響のあらわれ方については詳しく分かっていませんでした。その点、今回の研究成果により、マイクロプラスチックの毒性がより明確になったと言えるでしょう。
【参考】
■静岡大学プレスリリース
プラスチックの魚類体内への取り込みを透明金魚を用いて可視化
■「Toxicology Mechanisms and Methods」に掲載された抄録(アブストラクト)
Real-time monitoring of microplastic accumulation in fish bodies using transparent goldfish revealed initial attack on the gill

斉藤 勝司(さいとう かつじ)
サイエンスライター。大阪府出身。東京水産大学(現東京海洋大学)卒業。最先端科学技術、次世代医療、環境問題などを取材し、科学雑誌を中心に紹介している。

