電圧変化で色を変えられる素子
―印刷法で量産技術を開発
:産業技術総合研究所/東和製作所/関東化学

 (独)産業技術総合研究所は11月20日、かける電圧を変えるだけで青や黄色、透明などに色が変わるエレクトロクロミック材料をガラス基板などに印刷する技術を開発したと発表した。磁石加工の(株)東和製作所と試薬メーカーの関東化学(株)と共同で開発したもので、これまで量産が難しかった大面積のエレクトロクロミック色変化素子を低コストで製造できると期待している。
 エレクトロクロミック技術は、電気化学的な酸化・還元によって色を変えるもので、[1]色の変化が大きい[2]電気で制御できる[3]原理的に低コスト―などの利点がある。色を自由に変えて外光をカットする調光ガラスなどに応用すれば、省エネ材料としても期待できる。
 しかし従来は、溶液を垂らした基板を高速回転させて遠心力で塗布するスピンコート法や半導体の回路描画技術が使われており、低コストで大面積化するのは困難だった。
 研究グループが開発したのは、ガラス基板などに穴の開いたマスクを通して必要なミリ単位にナノ粒子化して溶媒に分散させ、インク化する技術も開発した。また、基板の間に挟む封止材や寒天状のゲル電解質もスクリーン印刷できるようにした。
 実験では、0.4V~マイナス0.4Vの電圧変化で青色か透明に自由に変えることができた。また、従来のスピンコート法で作ったものに比べ、色の変化速度が8~12%高速化することも分かったほか、青や黄色に変化する素子を試作することにも成功した。
 産総研は量産性を確認するため、新技術で10cm角のエレクトロクロミック素子を1,000個作り、電気制御で色の変化を楽しめるオブジェを制作、東京・渋谷で約1週間展示した。今回の成果について研究グループは、「数年以内の実用化を目指し、用途の多様化も図りたい」としている。

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量産対応印刷法により作製したエレクトロクロミック素子。左側、右側はそれぞれ0V、1.2Vの電圧をかけた時の素子の色(提供:産業技術総合研究所)