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フクロウの採食活動への交通騒音の影響を解明―獲物を見つける能力17~89%低下:北海道大学/森林総合研究所

(2016年9月20日発表)

 北海道大学と(国)森林総合研究所の研究グループは9月20日、カリフォルニア・ポリテクニック州立大学と共同で、交通騒音がフクロウ類の採食活動に及ぼす影響を野外実験で初めて明らかにしたと発表した。騒音量を、静かな住宅街程度から電車内相当に変えて獲物獲得能力の変化を調べたところ、17~89%の低下が認められたという。

 フクロウなどの夜行性の聴覚捕食者は、獲物が出す微かな音を頼りに狩りをしている。そのため、騒音は聴覚捕食者の採食効率を低下させていると指摘されてきたが、夜間における野外観察は難しく、これまで定量的に調べられたことはなかった。

  研究グループは今回、フクロウ類が特定の周波数の音を頼りに獲物を探しているという習性に着目し、フクロウ類を誘引する人工音声を開発、北海道と宮城県のフクロウ類越冬地103か所で観察実験を行った。

  実験では、40~80 dB(デシベル)の交通騒音を拡声器で発生させ、フクロウ類が35 dBの人工音声を見つけられるかどうかを調べた。取得された78個体のデータを解析した結果、人工音声を見つける確率は騒音存在下で17~89%低下していた。

 また、時速60kmで走行する普通車の騒音をもとに、道路からの距離と採食効率の関係を調べたところ、フクロウ類の採食効率は道路から120m以内の範囲で低下すると推定された。

 同じ聴覚捕食者であるコウモリによるこれまでの研究では、道路から50m以内の範囲で採食効率が低下すると推定されていたため、今回の実験で、交通騒音の影響が従来考えられていたよりも広範囲に及ぶことが示されたという。

 今後騒音が生態系や生存率へ及ぼす影響などを調べ、対策の樹立が求められるとしている。