[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

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わかる科学

光を当てると接着し、熱を加えるとはがれる接着剤を開発!

(2018年4月01日)

常温では液体だが、波長405ナノメートルの紫色の光を当てると固体になり、150℃以上に加熱すると液体に戻る。
提供:産総研

 接着剤というと、一度接着するとはがすのが一苦労というイメージがありますが、接着した後、何度もはがす事ができる接着剤が開発されました。

 光を当てると硬化して、物と物を接着させる光硬化性接着剤というものがあります。すでに幅広い分野で使われていますが、他の接着剤同様、一度接着させたらはがすのが大変でした。
 そこで、国立研究開発法人産業技術総合研究所の秋山陽久主任研究員は、材料を工夫することで、光を当てると硬化し、熱を加えると脱着する新しい接着剤を開発しました。
 同研究員は、6年前に糖アルコールとアゾベンゼンからなる液化・固化を繰り返すことができる材料を開発しています。しかし、この接着剤は初期状態が固体なので物への塗布ができません。また、接着剤自体に黄色やだいだい色の着色があるので、使用する対象物を選ぶこと、接着強度そのものが弱いなどといった課題がありました。
 そこで、これらの課題を解決するための研究を続け、このたび、アントラセンという材料を使った新たな接着剤を開発しました。
 アントラセンは光応答性を持つ物質で、光が当たると、2つの分子がペアになる二量化という反応を起こして硬化します。新しい接着剤は、糖アルコールとアントラセンからできており、405ナノメートル前後の紫色の光を当てると硬化します。また、150℃以上の熱を与えると、二量化した分子の結合が途切れて脱着します。アントラセン自体は固体ですが、結晶化しないように分子配列を変えて、室温でも液体状態で安定となる分子構造を設計しました。
 この接着剤で小さなガラス板とアルミの金具を接着し、重さ約6キログラムの椅子を持ち上げることができました。接着・脱着は5回以上も繰り返せることが確認できたそうです。

アルミニウムとガラスを接着し、重さ約6キログラムの椅子を持ち上げることができた。   提供:産総研

 この新接着剤を利用すると、接着のやり直しがきくので、作業の無駄が少なくなります。また、電気製品をはじめ、さまざまな物が廃棄されるときに、熱を加えて簡単に分解できるので、リサイクルのコストを安くすることができます。
 この他にも、いろいろなアイディアが生まれてくるでしょう。みなさんは、どんな使い道を考えますか?

 

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記事執筆:白鳥 敬
http://www.kodomonokagaku.com/