(独)農業生物資源研究所は11月21日、ミュンヘン大学、大阪大学、かずさDNA研究所と共同で、土壌微生物である根粒菌や菌根菌と植物の共生に関わる遺伝子の一つである「Cyclops遺伝子」を発見したと発表した。
根粒菌は、マメ科植物の根に感染してこぶ状の組織である根粒を形成し、「共生窒素固定」といって大気中の分子状窒素をアンモニアに変える働きをする。また、菌根菌は、土壌からリン酸などを吸収して植物に供給し、代わりに酸素化合物を植物からもらって共存している。
植物が根粒菌と菌根菌の両者と共生する際には、共生を支配している遺伝子(共通共生遺伝子)が7つ存在すると予測されているが、そのうちの6つは既に発見されている。
今回研究グループは、マメ科モデル植物であるミヤコグサを材料に用い、根粒菌との共生ができなくなった変異体の中から共通共生遺伝子に異常のあるものを分離し、ゲノムの配列情報を利用しながら今まで未発見であった共通共生遺伝子の残りの一つCyclops遺伝子を見つけた。
根粒菌や菌根菌からのシグナルを認識した植物の細胞は、共生遺伝子を発現することで共生を成立させる。この過程でCyclops遺伝子から作られるCyclopsタンパク質が、別の共通共生遺伝子から作られるCCaMKタンパク質によりリン酸化され、共生に必要な遺伝子の発現を制御していることが推定された。さらに、Cyclops遺伝子はイネと菌根菌の共生にも関わっており、この遺伝子の機能は植物に広く保存されていることも推測された。
今後、根粒菌や菌根菌との共生の仕組みの研究が進み、共生の効率を高めることにより、作物をより少ない肥料で生育する新たな環境低負荷型農業の発展が期待される。
この研究成果は、11月24日の週(米国時間)に、米国科学アカデミー紀要のオンライン版で公開された。
No.2008-46
2008年11月24日~2008年11月30日