世界初、窒化ホウ素・シリコン系太陽電池の試作に成功
:物質・材料研究機構

 (独)物質・材料研究機構は9月4日、窒化ホウ素(BN)とシリコン(Si)を使った太陽電池の試作に世界で初めて成功したと発表した。発電効率は、まだ2%程度に過ぎないが、前途有望な数値という。窒化ホウ素・シリコン太陽電池は、耐久性、信頼性、耐候性などの要求が厳しい無人観測装置や宇宙環境分野などにうってつけと見られている。
 これまで窒化ホウ素を素材にした太陽電池やダイオードのような半導体素子は作れなかった。半導体化に欠かせないドーピング(不純物を加えて導電性を制御すること)が難しかったからだ。
 今回、同機構は、「レーザーミキシング・プラズマCVD(化学的気相成長)法」という独自の新手法を用い、成長する窒化ホウ素の薄膜にシリコンをドーピングしてp型半導体にすることに成功、窒化ホウ素・シリコン系太陽電池を実現した。
 窒化ホウ素薄膜の原料ガスとしてジボランとアンモニアを使い、この混合ガス存在下でシリコン基板にレーザーとプラズマを同時に照射して窒化ホウ素のCVDを行うと、生成する窒化ホウ素に基板のシリコンが混入・ドープされ、シリコン基板上に窒化ホウ素の薄膜が成長する。つまり、1ステップで太陽電池セルが製造できる。使用するレーザーは、アルゴン・フッ素エキシマレーザー。
 また、この製造法では、電池薄膜の表面がミクロン・サイズ(1ミクロンは100万分の1m)の突起で覆われるため、太陽光の反射が抑えられ、光吸収効率の向上に役立つ。
 今回作製した太陽電池は、n型シリコン基板の上にp型の窒化ホウ素を載せたヘテロ型だが、同機構としては、さらにn型の窒化ホウ素も作り、全体が窒化ホウ素製のホモ型を作る計画だ。
 窒化ホウ素は、透明なので将来、全て窒化ホウ素の太陽電池ができれば蓄電池と組み合わせた車載型サンルーフ太陽発電システムや、窓に貼り付けられる太陽電池などの開発も期待される。

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試作した窒化ホウ素・シリコン太陽電池の表面拡大写真。表面がミクロン・サイズの微細な突起で覆われている(提供:物質・材料研究機構)