高エネルギー加速器研究機構と(独)理化学研究所は1月15日、素粒子の究極理論とされる「超弦理論」の計算機シミュレーションに成功し、ブラックホールの内部の様子を世界で初めて明らかにしたと発表した。
ブラックホールは、質量が極度に集中している天体で、重力があまりにも強いために周囲の時間と空間が歪み、光や全ての物質はブラックホールの中に閉じ込められてしまう。
1974年に英国の物理学者ホーキング博士は、ブラックホールが光などを放出しながら少しずつ小さくなるという、いわゆる「ホーキング輻射」の存在を理論的に示した。
超弦理論は、一般相対性理論のように重力を扱う理論と、素粒子の振る舞いを説明する理論の二つを統合する理論で、全ての素粒子を極めて小さな弦の様々な振動の仕方として表す。超弦理論を用いると、ブラックホールの内部構造を解明できると考えられていたが、計算が極めて難しいためにこれまで実現していなかった。
今回、研究チームは、超弦理論に基づきブラックホール内部の状態をスーパーコンピューターを用いてシミュレーション(構築)することに成功した。また、弦の振動を周波数に応じて効率的に数値計算する新しい手法を確立し、多数の弦がランダムに揺らいでいる状態(弦の凝縮状態)のエネルギーを超弦理論に基づいて計算した。
その結果、ホーキング博士の理論から導かれるエネルギーの振る舞いと一致し、ブラックホールの性質を超弦理論で実証することができた。
この研究成果は、米国の科学誌「フィジカル・レビュー・レターズ」オンライン版に1月15日に掲載された。
No.2008-2
2008年1月14日~2008年1月20日