(独)産業技術総合研究所は12月18日、ステムセルサイエンス(株)との共同研究により、増殖・分化能力の低下した「ヒト間葉(かんよう)系幹細胞」に単一の遺伝子を導入することで、増殖能と分化能(骨分化)を回復することに成功したと発表した。
間葉系幹細胞は、成人に存在する未分化な細胞で、筋肉や骨など様々な細胞に分化できる能力を持っている。患者自身の骨髄などから得られた間葉系幹細胞は、骨や心臓などの再生医療に用いられつつあるが、増殖・分化能力が採取後数週間で激減することが再生医療への応用を狭めている。
今回、増殖能と分化能の低下した幹細胞に、レトロウイルスを用いて胚性幹細胞(ES細胞=発生初期段階の細胞塊から作られる細胞株で、生体外で全ての組織に分化する能力を持つ)で多く発現する「Nanog遺伝子」や「Sox2遺伝子」を導入した。
この内、Nanog遺伝子を導入した細胞では、遺伝子が導入されていない細胞に比べて数百倍も増殖能が高まった。このNanog遺伝子導入細胞を、分化誘導因子と共に培養すると骨細胞に分化した。
また、Sox2遺伝子だけを導入した細胞では効果はなかったが、「b-FGF」というタンパク質と一緒に培養すると増殖能と骨分化能の回復がみられた。
今回用いた細胞は、すでに臨床応用されている冷凍保存細胞で、早期に実用化(臨床応用)が可能とみられている。今後は、遺伝子導入の方法などの改良を行い、2010年をめどに種々の難治性患者への移植(臨床応用)を目指すことにしている。
No.2007-50
2007年12月17日~2007年12月23日