(独)物質・材料研究機構は11月29日、日立化成工業㈱と共同でフッ化物強誘電体の大きな単結晶を育成、この単結晶を使って作った波長変換素子で、3つのレーザー光をそれぞれ半分の波長に変えることに世界で初めて成功したと発表した。波長変換素子に使った単結晶は、「フッ化バリウム・マグネシウム(BaMgF4)」。得られたレーザー光は、波長が532nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)、415nm、406nmと、いずれも可視領域の光である。 レンズやコーティングなどの材料として知られるフッ化物単結晶が機能性材料として使われるのは今回が初めて。研究グループは、高精度な雰囲気制御型引き上げ法で直径5cm級のフッ化物単結晶を育成する大型化技術を確立、さらに品質を高めて優れた強誘電特性を持つBaMgF4 単結晶を実現した。 この単結晶で作成した波長変換素子は、例えばYAGレーザーが発する波長1064nmの光を入射すれば、半波長532nmのレーザー光が出てくる。このような現象を「第2高調波発生(SHG)」という。 今回、SHGの実現に成功したのは可視領域の光だが、「フッ化物強誘電体単結晶を用いて(より波長の短い)紫外・真空紫外領域でのSHGが原理的に可能なことを実証したことになる」と同研究所ではいっている。同研究所は、さらに単結晶の改良などに取り組み、紫外・真空紫外領域のSHG実現に挑戦することにしている。 この研究成果は、来年3月に開かれる応用物理学会春季学術講演会ほかで発表する。 詳しくはこちら |  |
フッ化バリウム・マグネシウム単結晶。左上は、育成した直径5cm級のインゴット(提供:物質・材料研究機構) |
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