ナノシートを基板上に室温で作製、結晶薄膜を成長させることに成功
:物質・材料研究機構/科学技術振興機構

 (独)物質・材料研究機構と(独)科学技術振興機構は10月15日、結晶の方向が揃った薄膜(配向膜)を成長させることができるシード層(種膜)を基板上に室温で作る技術を開発したと発表した。無機ナノシートと呼ぶ厚さが1~2nm(ナノメートル=1nmは10億分の1m)オーダーのシード層を溶液プロセスで基板表面に形成し、それを種にしてその上に配向膜を成長させるというもの。熱処理なしに室温でシード層が作れるので、プラスチック基板上に高品質の結晶薄膜を作ることができる。紙の様に折り曲げられる次世代電子デバイスなどを作製する技術として展開が期待される。
 高品質の結晶薄膜成長には、単結晶を基板にしたり、ガラスや金属テープ上にシード層を中間層として作り、それを鋳型に結晶成長させる方法がある。しかし、単結晶基板は高価な上、サイズに制限があり、シード層作製には大掛かりな装置や熱処理が必要だった。
 今回は、ガラス基板上に厚さは原子数個分、横幅は数10μ(ミクロン=1μは100万分の1m)の酸化ニオブと酸化マンガンのシード層を作製、酸化ニオブ上には誘電体材料のチタン酸ストロンチウム、構造の異なる酸化マンガン上には透明導電体材料の酸化亜鉛の結晶薄膜を、それぞれ室温で成長させることに成功した。ガラス基板にシード層を着けるには、シード素材の溶液表面にガラス基板を漬けて垂直に引き上げる。溶液プロセスなので熱処理が無く、熱安定性の低いプラスチックフィルムにも使える。電子顕微鏡観察により、シード層であるナノシート上に良質な配向膜が成長していることが確認された。
 この手法は、現在知られている数十種類のナノシートに使えるので、シード物質を既存の様々なナノシートから選択することで成長させる結晶薄膜の構造に適したシード基板を作ることができる。

詳しくはこちら