高性能な中性子遮蔽コンクリートを開発
:高エネルギー加速器研究機構/間組

  高エネルギー加速器研究機構と(株)間組技術研究所は、従来のコンクリートの半分程度の厚さで同レベルの中性子遮蔽効果が得られる新しいコンクリートを開発したとこのほど発表した。中性子源のコンパクト化に寄与すると期待される。製造コストは、プレキャスト板(工場であらかじめ成型した板)で約2割増しだが、コンパクト化は室内空間の拡大や、建物重量の軽量化に伴う基礎工事費の低減につながる。
 中性子は、重さがほぼ同じ水素の原子核(陽子)と衝突すると、ビリヤードのように陽子を勢いよく弾き飛ばし、自らのスピードを大幅に下げる性質がある。このため、水素を多く含む物質は、中性子を効率良く減速でき、速度の落ちた中性子をホウ素、カドミウム、リチウムなど、中性子を良く捕らえる元素に捕獲させることで放射線利用における中性子線の遮蔽が行われている。
 今回、研究者は、水素原子を多く含む特殊な骨材を砂利の役目をはたす租骨材として用い、ホウ素を含んだ天然砂と特殊骨材を砂状に砕いたものとを混ぜて細骨材にした。セメントは、普通セメントを使った。特殊骨材の使用で、ホウ素による中性子吸収効果が高まり、性能試験の結果、中性子遮蔽性能が普通のコンクリートの1.7倍に達することが判明した。加速器の中性子源の遮蔽に用いた場合、普通コンクリートの半分の厚さで済み、医療用中性子線施設なら3分の1にできるという。
 ちなみに、中性子を用いたがん治療法(中性子捕捉療法)は、年々治療数が増加している。

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新コンクリートの中性子遮蔽性能試験(提供:高エネルギー加速器研究機構)