(独)物質・材料研究機構(NIMS)は9月7日、独自に開発した新規ナノ物質「カーボンナノケージ(CNC)」に、お茶の成分のカテキンとタンニンを選択分離する特性があることを発見したと発表した。
お茶などに含まれるポリフェノ―ル(植物に含まれる色素や苦味の成分)類は、健康食品として注目されているが、その中身は多種多様で、それぞれの成分が異なる薬効を持っている。このうちカテキンは、血圧上昇抑制作用などの効果があるといわれており、タンニンも鉄分の吸収を阻害する一方で、さまざまな抗菌作用のあることが知られている。このため多種多様なポリフェノールを分離し、目的に応じた成分を的確に使うことが求められている。
研究チームは、CNC(「NIMS参考物質第2号」として無償配布中)を用いることにより、極めて簡単に、かつ低コストで、カテキンとタンニンを分離する方法を考案した。
CNCは、5~10nm(ナノメートル=ナノは10億分の1)のかご型の精密に制御された孔径を持つ新規物資で、水に溶けている有機物質の吸着・分離などに高い能力を持つものと期待されている。
実験では、カテキンとタンニンを溶かした水溶液にCNCの粉を分散し、数時間攪拌してろ過したところ、約95%の選択率でタンニンだけをCNCが吸着し、分離することに成功した。
“混ぜて分ける”だけというこの方法を用いれば、今後簡単で安く、お茶の成分からタンニンのみを選択的に除き、貧血気味の人に適したお茶を作ることや、吸着したタンニンを回収し抗酸作用の強い成分だけを取り出すことなどが可能になる。
No.2007-35
2007年9月3日~2007年9月9日