(独)物質・材料研究機構と筑波大学は9月3日、化合物半導体にドーピング(添加)した不純物原子からエネルギーの揃った光子を一個ずつ発生させることに世界で初めて成功したと発表した。
従来の情報処理技術や通信技術の限界を超える革新的技術として研究開発が進められている「量子情報通信」には、一個一個の光子を必要時に自由に発生する「単一光子源」が必要で、こうした光子の発生源として「量子ドット」(大きさが数~数十nm(ナノメートル=ナノは10億分の1)の半導体微結晶)が研究されている。しかし、結晶成長により量子ドットを作る過程で個々のドットのサイズが均一にならず、単一光子の発光エネルギーが量子ドットごとにばらついてしまう問題があった。
そこで最近注目されているのが、半導体にドーピングした不純物を利用する方法で、今回III-V族化合物半導体を使って成功した。
今度の研究では、化合物半導体にガリウム・リン(GaP)を使い、その結晶に窒素原子をドーピングした。GaP結晶にV族元素の窒素をドーピングすると窒素原子がリンの格子位置を置換して励起子と呼ばれる電子・正孔対を作る。
実験試料は、有機金属気相成長法でGaPの層を形成後、成長を中断した表面にデルタドーピング法という手法で窒素原子のドーピングを行い、その上にGaPの層を成長させた。窒素原子の面密度が桁違いに低いので発光点が光学顕微鏡で識別出来るほどで、いずれの発光点でも波長541.5nmの緑色の光子一個を発生することが確認された。