微生物からビタミンDを活性化する酵素の分離・精製に成功
:産業技術総合研究所/メルシャン

 (独)産業技術総合研究所は8月22日、メルシャン(株)と共同で、微生物の放線菌から不活性型ビタミンDを活性化する酵素を分離・精製することに成功したと発表した。
 ビタミンDは、人間の体内では不活性型として合成され、その後肝臓と腎臓で活性化(水酸化反応)の過程を経てはじめて様々な機能を発揮する。
 活性型ビタミンDの生理作用は、カルシウムの吸収促進など多岐にわたっており、化学反応で合成(化学合成)された活性ビタミンDは骨粗鬆症などの治療薬として使用されている。しかし、現在主に使われている化学合成による方法では、製造工程が複雑な上に生産量も少なく高価であるため、最近は微生物を使用した活性型ビタミンDの製造が実用化されてきている。
 共同研究グループでは、微生物による活性型ビタミンD製造に実際に使用されている「シュードノカルディア属放線菌」を用い、ビタミンDを活性化する酵素(ビタミンD水酸化酵素)を探索した。その結果、ビタミンDを不活性型から活性型に変換する能力を持つタンパク質(酵素)を分離・精製することに成功した。
 精製したタンパク質の遺伝子を分離・特定したところ、ビタミンDを活性化しているタンパク質は、シトクロムP450群に属する水酸化酵素の一つであることが判明した。遺伝子の分離・特定により、この酵素の機能改変も可能になり、活性型ビタミンDの生産を高めることができるほか、ビタミンD類をもとにした新規医薬品などの開発も期待されている。
 この研究成果は、8月26日~30日に英国で開催された「第14回国際放射線学会」で発表した。

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