(独)産業技術総合研究所は6月14日、大手水晶振動子メーカーの日本電波工業㈱と共同で、高感度・高精度な水晶振動子式免疫センサーシステムを開発したと発表した。溶液中での発振周波数安定度を改善したことにより、簡単な操作で免疫反応の迅速測定が可能なコンパクトなシステムになった。ダイオキシン類、内分泌撹乱物質、残留農薬、アレルゲン、ストレスマーカー、疾病マーカー、病原性微生物などの計測への利用が期待される。
水晶振動子式免疫センサーシステムでは、免疫反応の抗体(特定の分子を認識する機能を持つ物質)などを水晶振動子上に付着させ、これで水晶振動子が重くなって生じる発振周波数の減少から、ナノグラム(1ナノグラムは、10億分の1グラム)レベルの質量変化を測定する。
今度の開発では、従来の研究室レベルの測定法に代わって、水晶振動子にポンプで送液しながら試料を注入する「流路型」にすると共に、専用の水晶振動子、高性能な低雑音回路などを開発した。これにより、発振周波数安定度が1桁以上改善され、測定精度も初めて10ミリヘルツを達成した。
今後は、溶液中での各種生体由来分子の水晶振動子への吸着量と発振周波数変化量との関係を放射性同位体標識タンパク質を使って解明、水晶振動子マイクロ天秤としての動作原理と動作範囲を各生体分子ごとに確証する。
新システムは、6月20日から22日まで東京ビッグサイト(東京・有明)で開かれた「第6回国際バイオEXPO」に出展、近く実用化される予定。
No.2007-23
2007年6月11日~2007年6月17日