脳の発達には脳内コレステロール合成の促進が重要なことを発見:産業技術総合研究所/科学技術振興機構

 (独)産業技術総合研究所(産総研)は6月13日、脳機能の発達には、神経細胞内のコレステロール合成の促進が重要であることを発見したと発表した。
 産総研では、(独)科学技術振興機構の研究員らと共に、脳の神経細胞におけるコレステロール合成や脂質ラフト(コレステロール含有率の高い生体膜の微細構造)の機能的役割を研究してきた。コレステロールは、生体膜の安定化や流動性、タンパク質の分泌や輸送の過程といった細胞機能に必要な脂質分子である。
 ラット大脳皮質の培養神経細胞などを用いた実験では、「BDNF」と呼ばれる脳の成長因子(脳由来神経栄養因子)を添加することによって、培養神経細胞のコレステロール含有量が増えることを発見した。さらに解析を進めた結果、コレステロール量が増加した神経細胞では、シナプス伝達機能(神経細胞間の情報伝達を行う機能)が著しく上昇し、遺伝子の発現も著しく増加していたことが分かった。
 この研究から、脳の成長因子BDNFが神経細胞内におけるコレステロールの合成を促進することや、このステップが神経細胞のシナプス伝達機構の発達に重要であることなど、脳機能の発達の新しいメカニズムが明らかになった。
 産総研は、脳機能の発達とコレステロール代謝の関係をさらに研究し、脳疾患の治療に役立つ薬の開発に結び付けたいとしている。
 研究成果は、6月13日(米国東部時間)に、米国の国際雑誌「The Journal of Neuroscience」電子版に掲載された。

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