(独)産業技術総合研究所は6月12日、豆類の害虫「マルカメムシ」が、ダイズなどの農作物を自分の食物として利用する性質を昆虫自身の遺伝子ではなく腸内共生細菌によって与えられることを世界で初めて発見したと発表した。 マルカメムシは、本州から屋久島(鹿児島)にかけて分布し、ダイズ畑に侵入して農業被害を引き起こす。この害虫は、腸内に特定の細菌(イシカワエラ)を保有しており、この細菌なしでは正常な成長や繁殖ができないほど密接な共生関係にある。 マルカメムシの母虫は、植物上に卵を産む時に、一緒に褐色の小さな塊を産みつける。この塊は、内部に腸内共生細菌を封入した「共生細菌カプセル」で、孵化幼虫がカプセルに口吻を突き立てて内容物を摂取することで、共生細菌の感染が成立する。同研究所では、共生研究の新しいモデル系としてこのマルカメムシの腸内共生細菌のカプセル伝達系に注目し、研究を進めてきた。 研究チームは、マルカメムシと南西諸島(鹿児島、沖縄)に分布し農業被害を起こさないと言われる近縁のタイワンマルカメムシについて、カプセル交換実験によって両種間の共生細菌を入れ替えダイズ鉢で飼育を試みた。その結果、両種の卵孵化率が完全に逆転し、タイワンマルカメムシがダイズを利用する害虫と化し、マルカメムシが非害虫化することが分かった。 従来、害虫系統は、昆虫自身の遺伝子型によって決まると考えられていたが、この研究により、体内に共生する微生物が害虫としての性質を与えることが初めて明らかになった。
詳しくはこちら |  |
豆類の害虫「マルカメムシ」の成虫(提供:産業技術総合研究所) |
|