超低エネルギーのイオン注入技術を開発
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は3月5日、シリコン半導体の高集積化に向けて500eV(電子ボルト)以下の超低エネルギーでイオンを注入する新技術を開発したと発表した。表面から10nm(ナノメートル=1nmは10億分の1m)以下の超浅い領域にドーパント(不純物)をドーピングすることができ、これまでのイオン注入法で用いられていた結晶性を回復するための熱処理なしに、低抵抗化を実現した。
 シリコンにドーパントをドーピングして電気特性を制御するには、これまで数万eV以上のエネルギーによるイオン注入が必要とされていた。しかし、イオン注入で生じた結晶性の低下を回復するために行う熱処理によって注入したドーパントが拡散してしまう難点があって、表面近くの浅い領域へのドーパントの導入は困難だった。
 新技術は、シリコン単結晶に保護膜として厚さ1nmの酸化膜を形成。加熱温度をシリコン結晶中にボロン(ホウ素)の拡散が生じない800℃以下とし、ボロンイオンを500eV以下の超低エネルギーで注入した。その結果、ボロン注入量が最大値の10%になる深さは8nmで、300eVの時に2.8KΩ(キロオーム)、500eVで3.0KΩという低抵抗値を示した。
 将来のシリコン半導体製造では、高集積化のために厚さ10nm以下の浅い領域にドーピングする技術が必要になると見られているが、「今回の技術開発はそれに応えるもの」と同研究所では言っている。
 今後、半導体製造装置メーカーと連携して、実用化を目指すことにしている。

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