「六条オオムギ」の進化を遺伝学的に解明
:農業生物資源研究所など

 (独)農業生物資源研究所は1月17日、食品や飼料となる「六条オオムギ」は、ビール醸造に使われる「二条オオムギ」から進化したことを遺伝学的に解明したと発表した。
 これまでオオムギは、野生の二条オオムギが人間によって栽培化され、その後自然の突然変異で穂に3倍の種子をつける六条オオムギが生れたと考えられていたが、遺伝学的にどのように進化してきたかは分かっていなかった。
 生物研では、農林水産先端技術産業振興センター、筑波大学、名古屋大学、ドイツのライプニッツ植物遺伝作物研究所などと国際共同研究グループを作り研究を進めてきた結果、オオムギの穂の形を決める遺伝子(六条性遺伝子)を発見し、穂の形を制御する遺伝子の領域に突然変異が生じて六条オオムギに進化したことを初めて分子遺伝学的に証明した。
 六条性遺伝子は、二条オオムギでは正常に働き、穂軸についている3個の小穂(しょうすい=小花)の内、中央の小穂以外の発達を抑える働きをしているのに対し、六条オオムギではこの遺伝子の塩基配列の内、1塩基に変異が生じて穂の制御機能が失われているため、穂軸に付く3個の小穂すべてが発育して種子をつけることが明らかになった。
 この突然変異は、六条オオムギの3つの系統で別々に認められるため、栽培の歴史の異なる時代・地域でそれぞれ独立に生じ、進化していったものと考えられている。
 研究成果は、米国科学アカデミー紀要に掲載されるが、それに先立ち1月12日(米東部時間)にオンラインで公開された。

二条オオムギの穂(上)と、六条オオムギの穂(下)(写真提供・農業生物資源研究所)