(独)高エネルギー加速器研究機構(KEK)、(独)理化学研究所、京都大学、東京大学の合同研究チームは12月7日、KEKの加速器実験で、高密度環境といえる原子核内では「ファイ中間子」の質量が真空中より約3%減少し、寿命も約4分の1になることを世界で初めて確認したと発表した。物質を構成する素粒子の質量獲得機構の解明に大きく貢献する成果といえる。
物理学の「標準理論」によると、超高温・超高密度状態の宇宙創成時、素粒子の質量はほぼゼロだったと考えられている。そのため、素粒子が質量を得たメカニズムの解明に向け、理論的に予想される高温あるいは高密度状態での素粒子の質量減少を調べる実験が世界各国で行なわれている。実験するのに幾つかの利点のあるファイ中間子は、この種の実験によく使われるが、質量変化を測定した実例はこれまでなかった。
合同研究チームは、通常の原子核の内部が素粒子の質量減少の検証に必要な高密度状態であることに着目して、KEKの「陽子シンクロトロン」で加速した陽子を銅や炭素の原子核に打ち込んで原子核内にファイ中間子を生成。その質量をファイ中間子が非常に短い寿命で崩壊する時にほんの僅かに生じる電子・陽電子対のエネルギーから測定、既に知られている真空中の質量より減っていることを確認した。
No.2006-5
2006年12月4日~2006年12月10日