慶応義塾大学と(国)物質・材料研究機構、群馬大学は6月1日、共同で世界最小レベルの超極細の超電導ナノワイヤーを作ることに成功したと発表した。
超電導材料は、送電ケーブルやリニアモーターカーといったメートルサイズの大型装置にだけでなく、マイクロメートルオーダーの磁気・電子・光デバイスなどにも広く使われるところまできている。
一方、超電導体をさらに微細化してナノメートルのオーダーにまでもっていけば、これまでのマクロな超電導体では知られていない新しい現象が現れることが近年明らかになってきており、その研究が注目されている。
しかし、超電導体として知られる多くの材料は、加熱下での成長が必要、半導体の加工で広く使われているエッチング加工が行いにくい、といった理由から微細化が難しく、ナノメートルレベルの極微細な超電導デバイスの開発が阻まれている。
今回の成果は、その壁を破るもので、直径が1nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)のチューブ状(筒状)の炭素でできたカーボンナノチューブが結びついてできた架橋カーボンナノチューブの上に超電導材料の窒化ニオブを成長させハイブリッド化して超極細超電導ナノワイヤーを作ることに成功した。
得られた超電導ナノワイヤーは、全長数μm(マイクロメートル、1μmは100万分の1m)にわたり窒化ニオブが途切れることなく均一に成長していることを透過型電子顕微鏡による観察で確認している。
この超極細超電導ナノワイヤーの両端に電極をつけて電子デバイス化して特性を測定したところ、低温にするほど超電導状態が壊れて抵抗が上がるという超電導-絶縁体転移が現れるなどマクロな超電導体では生じない特異な現象が現れることも確認できたとしている。
窒化ニオブは、電気抵抗ゼロの超電導状態に移る超電導転移温度が高く、実用的な二元系の超電導材料として知られる。今回の手法は、二元系以外の他の多元系の超電導材料にも利用できるものと見られ、様々な超電導デバイスに適用可能と研究陣はいっている。
この研究の一部は、(国)科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業(さきがけ)の一環として行われた。