将来の気候変化による冷房需要とその経済的影響
―エアコン需要だけでGDPが0.34%損失
:国立環境研究所(2016年5月24日発表)

 (国)国立環境研究所は、温暖化対策の取り方次第で、2100年の経済にどのような影響が出るかを推計した結果を、5月24日に発表した。これまで考慮されなかった途上国でのエアコン(特に冷房機器)の普及、増加に注目して分析した。有効な温暖化対策を講じない場合に世界のGDPは0.34%損失するが、最も厳しい対策の「2℃目標」を実施した場合には損失はほぼゼロに抑えられることが分かった。途上国が将来経済発展すると、温暖化の中で大幅なエアコン導入が進み、その導入費用が経済を圧迫するのが原因で、対策として安いエアコンの提供が必要とされている。

 この研究は、国立環境研究所と京都大学などが開発した「統合評価モデル(AIM)」の経済モデル版AIM/CGEを用いた。温暖化がもたらす影響を予測する総合的な大型シミュレーションモデルで、将来の人口やGDP、エネルギー技術の進展具合などの条件を入力すると、エネルギー消費量や二酸化炭素排出量、経済損失などが出力される。冷房の潜在的需要は、経済レベルと気温によって決定すると仮定した。

 将来の気候条件では4つのケースを想定した。昨年12月の地球温暖化防止パリ協定で決まった究極的な目標である「2℃目標」を推進して排出量を減らし、平均気温の上昇を1.7℃に抑えるケース。反対に対策を取らずに2100年の地球の平均気温が、産業革命以前から4.5℃上昇するケース。残りの2つのケースはこの間に入るものとした。

 その結果、気候変化によるGDPは、①対策を取らないと-0.34%と減少し、②積極的な対策を取り、排出ガス削減を最も強く行えば、経済影響を-0.03%とほぼゼロに軽減できることが分かった。

 さらに経済成長率が高いほど途上国ではエアコン需要が高くなる。0.34%の損失はさほど大きくないように思えるが、「エアコンだけでこの損失だから、他の分野も含めればかなり大きな経済影響が予想される」としている。

 エアコンの値段を安く供給できれば、気候変化の経済影響を小さく抑えられることも分かった。これも温暖化ガスの排出を抑えることが前提での考え方になる。

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