らせん構造の導電性高分子
―電気伝導の担い手もらせん状確認
:筑波大学(2016年5月27日発表)

 筑波大学は5月27日、分子レベルの構造がらせん状の導電性高分子を新たに合成、電気伝導の担い手「電荷担体」もらせん状であることを確認したと発表した。合成導電性高分子は赤外光を吸収するだけでなく、光の波の振動方向(偏光面)が左右に回転する円偏光の一方だけをより強く吸収する光学活性を示した。光通信分野への利用などが期待できるとして、今後応用を検討していきたいとしている。

 物質の構造には左手と右手の関係のような対称性があるものを「カイラル(手)」と呼ぶ。分子レベルで右手型あるいは左手型に偏った構造を持つ場合には、光の偏光面を特定方向に回転させる光学活性があることが知られている。こうした性質はらせん状の構造を持つ合成高分子の一部にも見られる。

 そこで筑波大・数理物質系の後藤博正准教授は、らせん状の構造を持ち、同時に導電性も示す高分子について電気伝導と光学活性がどのような仕組みで関係しているのかについて詳しく調べた。

 実験では、光学活性でらせん構造を持つコレステリック液晶を電解液に利用、らせん構造を持つ導電性高分子「ポリエチレンジオキシチオフェン」を電気化学的に合成。さらに、この高分子に近赤外から短波長赤外領域の円偏光をあてて回転方向の異なる偏光の吸収量の差を分析、この導電性高分子がどのように電気を伝えているかなどを調べた。

 その結果、導電性高分子で電気伝導を担う電荷担体のうち、この波長領域の光を吸収するバイポーラロンと呼ばれる導電性高分子特有の電荷担体がらせん状の高分子の鎖に沿って移動していることがわかった。そのため導電性高分子ではバイポーラロンが高分子内部で非常に緩やかにねじれたカイラル構造を持ち高分子中を移動することで導電性を示すとして、このバイポーラロンを総称して「カイラリオン」と名付けた。カイラリオンは一方向の偏光だけをより強く吸収するという光学活性の原因になっていることも示唆されたという。

 導電性高分子は通常は電荷担体も直線状で、らせん状の分子構造を持つ導電性高分子の電荷担体についてはこれまでほとんど議論されてこなかったという。

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