マウスの膵島細胞、凍結せず5日間の保存に成功
―カレイから抽出の不凍タンパク質使う
:産業技術総合研究所/ニチレイフーズ

マウス膵島細胞の生存率の経時変化。市販の細胞保存液(●)にAFPI(○)、ワカサギが持つ不凍タンパク質AFPII(△)、タラの持つAFGP(◇)、トレハロース(■)、ウシ血清アルブミン(▲)を市販の細胞保存液に溶かしたものを調製し、各々に約10万個のマウス膵島細胞を浸漬したときの生存率の時間依存性を調べた(提供:産業技術総合研究所)

 (独)産業技術総合研究所は9月20日、(株)ニチレイフーズと共同で、魚のカレイから抽出したタンパク質を用いてマウスの「膵島細胞(すいとうさいぼう)」を凍結させないで5日間(120時間)もの間、生存させることに成功したと発表した。膵島細胞は、血液中のブドウ糖(血糖)を調整するインスリンなどのホルモンを分泌する細胞。インスリンの働きが悪くなると糖尿病になり、日本の糖尿病患者は1,000万人を超え、世界で6番目に多い。

 

■糖尿病治療に明るい光

 

 糖尿病の治療法として患者の肝臓内に膵島細胞を注入(移植)してインスリン分泌を再開させる「膵島細胞移植」が注目されている。そうした中、今回のように膵島細胞を凍結させないで数日間保存できれば、貴重な膵島細胞を遠隔地などにも輸送して使うことが可能になり、より多くの人々が膵島細胞移植を受けられるようになるだけに今後の発展が期待される。
 産総研は、魚類やキノコ類など日本の数十種類の動植物が「不凍タンパク質」と呼ばれる氷の成長を抑えて生物の機能や組織の凍結を防ぐ物質を持っていることを見つけ、その構造や機能を詳細に調べている。
 今回の成果は、カレイから抽出した「AFPI」という不凍タンパク質を使うとマウスの膵島細胞を4℃の非凍結温度で120時間保存できることを見つけたもの。
 実験は、37℃で培養したマウスの膵島細胞を不凍タンパク質の含まれた細胞保存液に浸し、4℃で保存して生存率を調べる方法で行なわれ、カレイの不凍タンパク質「AFPI」を使うと120時間後で約60%の高い生存率が得られることが分かった。
 産総研は、「マウスの膵島細胞で観察された今回の不凍タンパク質の保護効果は人の膵島に対しても同様に発揮されることが期待される」といっている。

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