(独)農業生物資源研究所は9月17日、カイコで実際に働く約1万1,000個の遺伝子の塩基配列を解読したと発表した。害虫に選択的に作用する薬剤の開発や遺伝子組み換えカイコによる有用物質生産などの産業応用が期待できるという。
■害虫の制御剤や医薬品開発も
生物資源研は西南大学(中国)、産業技術総合研究所、東京大学と共同で、カイコの様々な組織に由来する完全長cDNAライブラリーを作製、その中から重複を省いて選抜した1万1,104個を解読した。
cDNA(相補的DNA)は、遺伝子の塩基配列をもとに合成されるメッセンジャーRNA(mRNA)を鋳型にして人工的に作り出される一本鎖DNAを指す。完全長cDNAは、mRNAの全長をカバーしたcDNAのことで、タンパク質をコードしている遺伝子塩基配列のすべてを含んでおり、タンパク質を作るための完全な情報が備わっている。
研究チームは先にカイコのゲノムの完全解読に成功しているが、各遺伝子のゲノム上の位置やその遺伝子の機能などを解明するうえで、完全長cDNAの塩基配列の解読が待たれていた。
昆虫における完全長cDNAの大規模解読は、キイロショウジョウバエのそれに次ぐ成果という。
今回の解読により、カイコの遺伝子の機能解明が加速し、カイコが属するチョウ目の害虫の制御剤開発や、遺伝子組み換えカイコを用いた医薬品・検査薬の研究開発などの促進が期待されるとしている。