(独)農業・食品産業技術研究機構は12月21日、種子の遺伝子を解析するDNA(デオキシリボ核酸)マーカー選抜技術を用いて豆腐用の大豆新品種を我が国で初めて開発したと発表した。
大豆の葉を食い荒らす害虫のハスモンヨトウに強い抵抗性遺伝子を豆腐用大豆の主力品種である「フクユタカ」に効率よく導入することに成功したもので、同機構は暖地・温暖地での大豆作りの収量安定化に役立つと期待している。
2010年に大豆のゲノム(全遺伝情報)が解読されたことで、開花期や耐病虫性などに関わる遺伝子がDNAの塩基配列のどこにあるかの目印となる「DNAマーカー」が開発されている。このマーカーを利用すれば、大豆を栽培することなく、大豆種子の遺伝子を抽出・解析するだけで開花時期や耐病虫性などが分かる。このため、種子の段階で新品種開発に適した掛け合わせ相手を選抜できるようになった。
同センターは、まず収量や豆腐への加工品質などに劣るものの、ハスモンヨトウに強い抵抗性を持つ飼料用品種「ヒメシラズ」の遺伝子を解析、その抵抗性に関わる2つの遺伝子を見出した。そこで、フクユタカとヒメシラズを交配させて種子を取り、その中からDNAマーカーで抵抗性遺伝子を持つ種子を選抜、さらにフクユタカと掛け合わせるという戻し交配を5回繰り返した。その結果、ハスモンヨトウ抵抗性を持つ豆腐用大豆の新品種を開発することに成功した。
従来の育種法では、戻し交配が2年に1回しかできなかったが、今回の手法では1年に最大2回できることが確認でき、同機構は今後様々な大豆の新品種開発が効率的に進められると期待している。
No.2010-50
2010年12月20日~2010年12月26日