(独)農業生物資源研究所は12月22日、愛知県農業総合試験場、(独)農研機構北海道農業研究センター、農林水産先端技術研究所と共同で、イネの穂に発生する「穂いもち病」の抵抗性遺伝子を初めて単離(分離)し、その構造と機能を明らかにしたと発表した。 イネの品種改良では、イネに大きな被害を与えるいもち病に強いイネと、味などに優れた品種との交配を繰り返し、いもち病に強くなる遺伝子(抵抗性遺伝子)を持つ新たな品種を作る。 これまでの研究から、いくつかの抵抗性遺伝子が発見されているが、その多くは特定の系統のいもち病菌にしか効果がない(真性抵抗性)遺伝子で、栽培を繰り返す内に次第に効果を失い、長期間にわたって病気を防ぐことはできなかった。 今回、研究グループは、「マップベース・クローニング」という方法で、穂いもち病にも効果が高く、持続性のある圃場抵抗性遺伝子「panicle blast 1(Pb1)」を特定して分離し、その構造と機能を明らかにした。 圃場抵抗性遺伝子は、多くの系統のいもち病に対し完全とは言えないが抵抗性がある。穂いもち圃場抵抗性は、交配育種により我が国のイネに導入されてから30年以上になり、これまでに穂いもち圃場抵抗性を持つ品種は20以上育成されていて、その安定性が注目されている。このため、遺伝子Pb1による穂いもち圃場抵抗性がなぜ長期にわたって維持されているかを解明することは、抵抗性遺伝子を利用したイネの育種を進めていく上での大きな課題となっている。 ゲノム(全遺情報)を利用して解析した結果、Pb1遺伝子の配列は、真性抵抗性遺伝子と基本的に類似の構造を持ちながら、安定した抵抗性を示すことが分かった。 また、Pb1の圃場抵抗性は、イネの生育に従って高まり、穂の出る直前や穂の出た後に最も強くなるという特徴がある。Pb1遺伝子の発現を解析した結果、いもち病の抵抗性の強さとPb1遺伝子の発現量や発現パターンとの間に強い関係のあることが分かり、これがPb1による抵抗性が長期にわたって維持されてきたことと深く関わっているものと見ている。 同研究所は、今後、Pb1遺伝子の機能を分子レベルでさらに深く解析すると共に、イネの葉に発生する葉いもち病に効果の高い圃場抵抗性遺伝子と組み合わせることで、より優れたいもち病抵抗性をもつイネの育成に努めたいとしている。 詳しくはこちら |  |
Pb1遺伝子を導入して穂いもち病抵抗性を持たせた稲穂(右)と、同遺伝子を導入していない穂いもち病にかかった稲穂(左)(提供:農業生物資源研究所) |
|