オオムギの開花に必須の遺伝子を見つけ、制御機構を解明
:農業生物資源研究所/作物研究所など

 (独)農業生物資源研究所は1月25日、(独)農業・食品産業技術総合研究機構作物研究所、(社)農林水産先端技術産業振興センター農林水産先端技術研究所、スイス・チューリッヒ大学、ドイツ・ライプニッツIPK研究所と共同で、オオムギの「開花」に必須な遺伝子「CLy1」を同定(決定)し、この遺伝子の機能が制御される機構を明らかにしたと発表した。
 イネやコムギ、オオムギなどの穀物は、その種子を食用にする作物で、いずれも同一の花の中に雄しべと、雌しべを持ち、それが自家受粉することにより種子を生成するので「自家受粉性作物」といわれる。自家受粉性作物では、花の内部で受精するので、結実のために必ずしも開花を必要としないにも関わらず、受粉時には開花して雄しべを花の外に出すため、病原菌の侵入が容易になることや、花粉が飛散することによる予期しない交雑が問題になっている。
 オオムギには、古くから遺伝的に開花せず、閉花したまま受粉する品種のあることが知られていた。近年、オオムギの閉花受粉性は、オオムギの赤かび病抵抗性の向上に有効であることが示されたが、その遺伝子に関する研究報告はまだなかった。
 今回の研究では、開花性のオオムギ品種「アズマムギ」と閉花性のオオムギ品種「関東中生ゴール」の交配集団を使用し、候補遺伝子を絞るなどの方法により「開花」に必須な遺伝子「CLy1」の同定に成功した。
 また、開花しない品種と開花する品種の違いは、この遺伝子の中の1つの塩基の違いが原因であることを突き止めた。この1塩基の違いが見つかった箇所は、CLy1の発現に影響が予想される部位で、この部位が変化することによりCLy1の機能が変わると考えられている。
 開花型での塩基配列(CLy1.a型)が、他の開花性の植物と共通の塩基配列を持っていたのに対し、開花しない閉花型の配列(CLy1.b型)ではDNA(デオキシリボ核酸)が変異していた。
 この研究により、イネ科植物の花が開く際の仕組みを解く手がかりが得られた。また、CLy1は、植物に普遍的に存在する遺伝子であることから、これにより花器官の形成機構を明らかにすることができると考えられている。さらに、CLy1の機能が制御される仕組みの解明は、病害にかかりにくい作物を作り出すことや新たな採種技術の開発につながると見られている。
 この研究成果は、米国科学アカデミー紀要のオンライン版に2009年12月14日に掲載された。

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開花性のオオムギの穂(左)と、閉花性のオオムギの穂(右)