「エアロゾル」の地球冷却効果、予想より小さい
:高エネルギー加速器研究機構/広島大学

 高エネルギー加速器研究機構と広島大学は5月30日、二酸化炭素(CO2)などの地球温暖化ガスとは反対に地球を冷やすとされる大気中の微粒子「エアロゾル」の冷却効果がこれまでの予想より小さいとの研究結果を得たと発表した。

 エアロゾルの冷却効果をどう見積もるかは、評価が固まっておらず、地球温暖化の予測精度を上げる際の大きな壁となっていた。今回の成果は、今後の温暖化予測の精度向上に貢献するという。
 大気中を漂うエアロゾルの冷却効果は、[1]太陽光を反射して遮る「直接効果」、[2]エアロゾルが核となって雲の形成を促し、太陽光を反射する「間接効果」―の二つ。冷却効果は、間接効果のほうが直接効果より高いとされているが、エアロゾルの組成や吸湿性がはっきりせず、その効果はつかみ切れていない。
 そこで広島大学大学院の高橋嘉夫教授らの研究グループは、間接効果をもたらすエアロゾルの内、有機エアロゾルの主要成分であるシュウ酸に注目、高エネ研の放射光施設を利用して詳しく分析した。その結果、エアロゾル中のシュウ酸の大部分がカルシウムや亜鉛などの金属イオンと結合して錯体になっていることを突き止めた。錯体になっているシュウ酸の吸湿性は、錯体になっていない場合に比べ1%以下にまで減少する。このため研究グループは、シュウ酸の雲核形成能力は減少し実際には間接冷却能力があまり大きくないと見ている。
 今回の成果によって、ジカルボン酸や有機酸など他のエアロゾルも錯体を作っている可能性が示唆されるとして、研究グループは「有機エアロゾルの冷却効果の議論には、共存する金属イオンによる錯体生成を考慮する必要がある」と指摘している。

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