(独)産業技術総合研究所は6月1日、山梨大学との共同研究で、水生植物であるヨシの根圏環境(植物の根とその周辺を含む環境)に生息する系統学的に極めてユニークな細菌を発見し、その分離培養に成功したと発表した。 近年の遺伝子レベルの解析により、深い地下や海中、大気圏に至るまでの地球環境中に膨大かつ多様な微生物が生息していることや、その99%がいまだに分離培養されたことのない未知の微生物であることが分かってきた。これらの未知で未培養微生物の多くは、従来の手法では培養の困難な「難培養性微生物」と考えられている。 しかし、このような未利用の生物資源である難培養性微生物を開拓できれば、医薬品、食品、酵素などのバイオ製品の開発に大きく貢献するものと期待される。 今回、産総研と山梨大学は共同で、水生植物の根圏に生息する微生物の多様性と機能の解明を目的として、これらの微生物の遺伝子レベルでの解析を行った結果、ヨシの根圏環境から新しい細菌「YO-36株」の純粋分離に成功した。 また、この細菌の「16S rRNA」と呼ばれる遺伝子配列について、生物の進化を調べる系統分類学的解析や生理・生化学的など多彩な解析を行った。その結果、既存のどの細菌種の遺伝子配列ともかけ離れており、世界の研究者の間で存在が推定されてはいたものの実際に分離培養された細菌種がないため、「OP10候補門」と呼ばれている「門」レベルの細菌であることが分かった。 細菌(バクテリアドメイン)の分類階級は、上位から門、綱、目、科、属、種に分けられており、「門」は細菌では実質的に最も上位の分類階級にあたる。今回の研究成果は、細菌の最上位の分類階級「門」レベルでの新しい発見となった。 また、新しく発見した細菌「YO-36株」は、細胞サイズが幅1.6μm(ミクロン、1μは100万分の1m)、長さ2.8μm程度の卵型、あるいは桿状(節と節の間が中空の茎)の細菌で、酸素呼吸により生育する化学合成従属栄養性菌であることも明らかになった。研究グループは、OP10候補門に「アルマティモナデテス(Armatimonadetes)」の学名をつけるよう、細菌を含む原核生物の系統分類命名を統括する国際委員会(ICSP)に提案し、認定された。 この研究成果は、英国の科学誌「International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology (IJSEM)」6月号に掲載される。 詳しくはこちら |  |
発見した新規細菌の電子顕微鏡写真(提供:産業技術総合研究所) |
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