植物体内の活性酸素発生の仕組みを解明
:筑波大学/理化学研究所

 筑波大学と(独)理化学研究所は3月16日、生体内で強い酸化力を持つ活性酸素の発生を調節する仕組みの一端を解明したと発表した。活性酸素は、植物体内では日照りや病害虫など劣悪環境に耐えるために必要な一方、過剰になると自らを傷つける毒素となるため生体内での発生は巧みに制御されているが、今回初めてそれに必要な生体内の信号伝達に深く関わる酵素を突き止めたという。
 研究グループは、この成果により生体内での活性酸素を人為的に制御する基盤ができたとして、劣悪環境下での植物の生育を促進する技術の開発などに道が開けると期待している。
 生体内では、細胞内のタンパク質をリン酸化、脱リン酸化する反応が繰り返され、それによって生命維持に欠かせない細胞内の代謝や信号伝達を調節している。今回突き止めたのは、そのリン酸化の際に働くタンパク質リン酸化酵素の一種「MAPK(マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ)」が活性酸素生成の信号伝達に深く関わっていること。
 研究グループは、アブラナ科の植物であるシロイヌナズナのMAPKの内、TDY型と呼ばれる8つのMAPKに注目、そのリン酸化活性を調べたところ、その内の一つ「MAPK8」が傷害や活性酸素によって活性化することを見出した。そこで、シロイヌナズナでその遺伝子を壊したところ、通常の10倍もの活性酸素が蓄積した。反対にMAPK8遺伝子を過剰に働かせると、活性酸素を抑制できることが分かったという。このことから研究チームは、MAPK8は過剰に活性酸素を蓄積しないよう安全弁として働く一方、適量の活性酸素を信号伝達物質として利用できるよう機能していると見ている。
 さらに研究グループは、TDY型MAPKが植物だけでなくマラリアなどの原虫にも存在することを見出しており、副作用の少ない抗マラリア薬の開発にも役立つとしている。

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