[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

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わかる科学

操作者と連動してアンドロイドアバターの表情が変化
-対面で話しているようなリアルなコミュニケーションを実現-

(2024年5月01日)

 人間そっくりの表情を見せるヒト型アンドロイドはすでに開発されています。しかしその表情はそっくりではあるもののリアルさに欠けています。なぜなら、そこにアンドロイドを操作する人間の存在が反映されていないからです。

 そこで、操作者の表情の変化をリアルタイムでネットワークによって送り、多彩な表情を表現できるアンドロイドアバターが開発されました。開発したのは、電気通信大学大学院情報理工学研究科機械知能システム学専攻の仲田 佳弘(なかた よしひろ) 准教授、東京電機大学未来科学部ロボット・メカトロニクス学科の 中島 瑞(なかじま みずき)助教(開発当時は電気通信大学同専攻特任助教)、電気通信大学大学院情報理工学研究科機械知能システム学専攻博士前期課程1年 新川 馨子(しんかわ かおるこ)さんの研究グループです。

 開発されたアンドロイドアバター「Yui」は頭部のみですが、首の運動を含めて28か所が変形できるため、人間に近い多彩な表情を作り出すことができます。また左右の眼にはカメラ、両耳にはマイクが組み込まれており、アンドロイドの周囲の視覚及び音声の立体的な環境情報を操作者に送ることができます。

 

開発されたアンドロイドアバターYuiの頭部。眼にはカメラ耳にはマイクが搭載されており、顔や首など28か所が動く。 嬉しい・悲しいなど多彩な表情ができる。 VRヘッドセットを装着した操作者が笑うと、アンドロイドアバターも笑う。(©IEEE)

 

 また操作者の表情の変化は、顔表面の変形を測定できるVRヘッドセットを用いて行います。操作者の表情の変化は、即座にアンドロイドアバターの表情に反映されます。アンドロイドアバターの前にいる対話相手は、遠隔地にいる操作者の表情の変化と連動したアバターの表情や口の動きから、まるで相手が眼の前にいるかのような存在感を感じることができます。

 研究グループは、今回開発されたアンドロイドアバターとインターフェースで実現した技術によって、これまでになかったような高い臨場感を持った遠隔コミュニケーションが実現できるのではないかといいます。

 このシステムによって操作者と対話相手が、アンドロイドアバターを通じて非常にリアルな双方向の対話ができるようになりました。オンライン会議や打ち合わせがぐっとリアルになり、対面で話しているときに近い感じでスムースに進むことでしょう。

 

 デモンストレーションのようすは、こちらで見ることができます。

 

【参考】

■電気通信大学プレスリリース

操作者が“憑依”できるアンドロイドアバターを開発
―視聴覚の共有による臨場感と操作者の表情再現による存在感を両立―

■論文『IEEE Access』誌

Development of the Lifelike Head Unit for a Humanoid Cybernetic Avatar ‘Yui’ and its Operation Interface

 

サイエンスライター・白鳥 敬(しらとり けい)
1953年生まれ。科学技術分野のライター。月刊「子供の科学」等に毎号執筆。
科学者と文系の普通の人たちをつなぐ仕事をしたいと考えています。