月や太陽の引力が地震の引き金に:防災科学技術研究所

 (独)防災科学技術研究所は1月28日、スマトラ島沖の巨大地震の前後に周辺地域で発生した地震を調査し、月や太陽の引力が、これらの地震の発生に強く関わっている可能性が高いことを明らかにしたと発表した。
 2004年12月26日に、インドネシアでスマトラ島沖地震(マグニチュード9.0)が発生、大きな津波被害をもたらしたが、研究グループはその後、この巨大地震の前後に周辺地域で発生した地震と潮汐の関係を調査した。
 月や太陽の引力は、海水に働き、潮の干満を生じさせる。同じように月や太陽の引力は、地球自身にも働き、地球を1日に2回大きく変形させる。この現象は、地球潮汐と呼ばれ、変形した地球の内部には数十~数百ヘクトパスカル(パスカルは圧力の単位。1ヘクトパスカルは1ミリバール)の力が加わる。
 調査では、地球潮汐と地震発生時刻の相関関係の強弱を表わす指標の時間的推移を見ると、1976年以降地球潮汐の影響はなかったが、1995年頃から相関関係が次第に強く現れ、スマトラ島沖地震の直前には顕著に存在していたことが分かった。  
 この相関関係は、スマトラ島沖地震の発生を境に消滅していった。また、地震は、地球潮汐による力が最大となる時刻の前後に集中していたことも明らかになった。
 スマトラ島沖で発生した他の2つの巨大地震(マグニチュード8.6および8.5)でも同様の傾向が確認された。
 地球潮汐による力は、地震を引き起こす地殻の歪の1,000分の1程度にすぎない。今回の調査結果は、地殻の歪が十分にたまった地震発生直前に限り、地球潮汐による微小な力が地震発生の「最後のひと押し」として作用することを示している。
 地震のメカニズムを解明する有効な手がかりになると共に、巨大地震の長期的予測にも役立つ可能性が期待される。
 この研究成果は、2009年12月15日に米国地球物理学連合(AUG)の「Geophysical Research Letters」のオンラインに掲載された。

詳しくはこちら