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海底観測網データを新幹線の地震対策に初めて使う:防災科学技術研究所ほか

(2017年10月30日発表)

 (国)防災科学技術研究所は、これまで整備してきた海底地震津波観測網のリアルタイムデータを新幹線の地震防災対策に活用するために、東日本旅客鉄道(JR東日本)、東海旅客鉄道(JR東海)、西日本旅客鉄道(JR西日本)と1030日に相互協力協定を結んだ。JR東日本は111日から一部の区間で活用を始めた。

 東日本太平洋沖地震や南海トラフ巨大地震の発生が危惧されている。高速で走行する新幹線の安全対策には、いち早く地震を捉えて緊急停止させる地震防災システムが欠かせない。

 地震動の初動(P波)を自動解析し、新幹線への影響度合いを判断して列車を停止させる早期地震防災システムは、世界に誇る先進基盤技術として知られる。これまでは地上に設置した地震計などの情報だったが、今回は海域で発生する震源に近い巨大地震の情報をより早く検知し、安全に活かすのが目的。

 防災科研は、20113月の東北地方太平洋沖地震の後から、関東、東北、北海道にかけての日本海溝・千島海溝南部に海底地震津波観測網(S-net)を順次構築してきた。

 観測網は太平洋沖の5つの海域海底(房総沖、茨城・福島沖、宮城・岩手沖、三陸沖北部、釧路・青森沖)の125か所にセットした地震計と津波計を、光ファイバー海底ケーブルで数珠繋ぎ状に整備した。また日本海溝軸外側にも25か所の観測点に同じ装置をセットし、海底の震源域での情報が地上通信回線を通して防災科研や気象庁などに送信される。

 防災科研と(公財)鉄道総合技術研究所は、列車制御用に共同開発したデータ伝送方式を使って房総沖海域での地震の加速度データの試験配信をしてきた。この成果を基に、JR東日本が111日からS-netデータの実配置を始めた。

 一方、防災科研はJR東海とJR西日本とも相互協定を結び、南海トラフ巨大地震の想定震源域に設置を進めている海底観測網のDONETを使って2018年度中に加速度計の試験配信をし、2019年度から新幹線の運行制御に使うことにしている。