(独)物質・材料研究機構は6月8日、(株)ヒキフネと共同で、実用スケール長(1km以上)のニオブとアルミの化合物でできた超電導線材に、高品質の銅を厚く短時間で複合する新しい高速メッキ技術を開発したと発表した。 10年前に同機構で開発したニオブ・アルミ線材は、次世代の強磁場超電導線材として期待されているが、実際に加速器や核融合炉などへの実用化を図るにはまだ課題が残されていた。たとえば、超電導線材は銅を混ぜて作るが、ニオブ・アルミ線材は約2000ºCの高温で連続的に急速加熱する特殊な熱処理(急熱急冷処理)を施すことから、処理中に銅が溶融してしまうため初めから銅を混ぜることができず、後で1km級の長尺線材に丸形状の銅を効率よく複合する必要があった。 今回、長さ1km級のニオブ・アルミ超電導線材に、厚みが150µ(ミクロン。150µは0.15mm)の高品質銅を高速電気メッキすることに成功し、処理速度は毎時約5m(1日あたり120m)と従来の技術(毎時約2m)に比べて格段に効率を高めることができた。処理速度を高速化するために電流密度を、従来法に比べて大幅に増やし100cm²当たり33A(アンペア)に上げるなど、様々な工夫をこらした。 同機構では今年の夏、米国フェルミ国立加速器研究所と共同で今回作製した長さ1km級の銅安定化ニオブ・アルミ超電導線材を使って、次世代加速器のための新しいラザフォード・ケーブル(超電導ケーブル)を試作する予定。 研究成果は、8月27日から米国フィラデルフィアで開催される「第20回マグネット技術会議」で発表される。 詳しくはこちら |  |
新開発の高速メッキ技術で銅を複合したニオブ・アルミ超電導線材の断面写真。外側のオレンジ色の部分が銅で、厚みは150µ(提供:物質・材料研究機構) |
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