木材成分を原料としたセシウムの沈殿剤を発見
:森林総合研究所(2016年4月27日発表)

 (国)森林総合研究所は4月27日、木材成分を原料とする全く新しい高性能なセシウム沈着剤を発見したと発表した。福島第一原子力発電所事故で発生した放射性汚染水に含まれる放射性セシウムの除去に活用できる可能性があるという。

 セシウムの沈着機能が見つかったのはPDC(2-ピロン-4,6-ジカルボン酸)と呼ばれる化合物。PDCは木材の主要成分の一つであるリグニンから微生物による発酵によって生産される物質で、反応性の高いカルボキシル基を持つことからプラスチックやフィルムなどの原料になることが知られている。

 この原料生産プロセスを研究していた森林総研のグループは、偶然にもPDCが水の存在下でアルカリ金属の一つであるナトリウムと錯体を形成し沈殿を生じる性質があることを発見した。

 そこで、アルカリ金属に属し、放射能汚染水に含まれる主要放射性核種であるセシウムとの作用について東京農工大と共同で調べたところ、アルカリ金属の中でも特にセシウムとの反応性が高く、また、同じアルカリ金属のナトリウムが10倍の濃度で存在していても、セシウムと優先的に錯体を形成することがわかった。

 環境中に放出された放射性セシウムの除去・回収には現在吸着材のゼオライトやプルシアンブルーなどが用いられているが、PDCはこれらと比べて遜色のない効果が期待できそうだという。今後PDCを高密度に充填したカラムなどを作り実用化を目指したいとしている。

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図2 PDCのアルカリ金属キレーターとしての意外な機能
PDCにはアルカリ金属と錯体を形成するという非常に珍しい性質があることがわかりました。リチウムからセシウムまでのそれぞれのアルカリ金属の1%水溶液に、7%PDC水溶液を添加するとセシウムのみ白色の錯体沈殿を生じることから、セシウムと特に反応性が高いことがわかりました。