パスタ用小麦の新品種開発
―初めて国産化可能に
:農業・食品産業技術総合研究機構(2016年4月25日発表)

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 (国)農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の西日本農業研究センターは4月25日、日本製粉(株)と共同でスパゲッティなどのパスタ類に使うデュラム小麦の新品種を日本で初めて開発したと発表した。気候が合わず国内ではほとんど作れなかった従来品種を改良、温暖で収穫期の降雨が比較的少ない瀬戸内地域で初めて栽培できるようにした。関係各県や生産団体と協力して当面は輸入量の1%以上に相当するデュラム小麦の生産を目指す。

 開発した新品種は地面から穂までの丈が短くて倒れにくいほか、成熟期は国内でパンやうどん用に栽培される普通小麦「農林61号」よりやや遅い特徴がある。単位面積当たりの収量は1a(アール、1アールは100㎡)当たり約60kg農林61号並み。このため国内でも十分に商業生産が見込めると判断、「セトデュール」と名付けて新品種登録出願をした。

 新品種は種子千粒あたりの重量(千粒重)や体積当たりの種子重量(容積重)が農林61号などに比べて重い。粗びきした小麦粉の黄色味も強く、パスタ用小麦粉としての性質は輸入小麦に比べるとやや劣るものの、普通小麦よりはかなり優れている。ただ、穂が出て以降に湿度が高いと発生しやすい小麦の病気「赤かび病」には極めて弱く、病原菌防除の徹底と種まきや収穫時期の最適化に注意する必要があるという。

 現在、兵庫県で7ha(ヘクタール使って実証栽培を進めているが、平成30年までに50haに拡大する。日本製粉は将来的に数千t使用したいとの意向を持っており、農研機構や瀬戸内地域の関係機関と協力して500ha程度の作付けを目指す。その収穫量は乾燥パスタに加工したときの販売額で約6億5,000万円相当。

 デュラム小麦は普通小麦の祖先にあたる小麦。普通小麦に比べて成熟期が遅く、収穫時期に降雨があると病気しやすい。このため収穫時期が梅雨に当たる日本ではほとんど栽培されて来なかった。

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