保険新技術で発作性心房細動手術
―手術時間約3分の2程度で患者負担軽減
:筑波大附属病院(2016年4月8日発表)

 筑波大学附属病院は4月8日、心臓の一部が細かくけいれんする発作性心房細動の最新治療技術である高周波ホットバルーンを用いたカテーテル手術に成功したと発表した。4月1日に始まった保険適用による新治療技術の手術は国内で初めて。従来の治療法に比べ医師による技術の習得が容易なほか、手術時間が約3分の2程度に短縮されるなど患者への負担も軽減できるという。

 発作性心房細動は心臓を規則正しく拍動させるための心筋の電気信号が乱れ、心臓の一部である心房が毎分350~600回も発作的にけいれんする、いわゆる不整脈の一種。心房内で血栓ができやすくなり、脳梗塞の主な原因の1つになるとされている。その治療には太ももの付け根などからカテーテルを挿入、乱れた電気信号の影響を受けないよう心房の心筋細胞を部分的に焼灼する手術が従来から行われている。

 心房には肺から静脈を通して血液が送り込まれるが、発作性心房細動の治療ではその肺静脈の心房内部への入口部にある心筋細胞をリング状に焼灼する必要がある。今回用いた高周波ホットバルーン法は、カテーテルでバルーンを心臓内部の患部にまで運ぶ。そのうえでバルーンの中に生理食塩水を注入、高周波で70℃まで加熱して異常な電気信号を出している肺静脈入口部の心筋細胞をリング状に一気に焼灼することが可能。

 従来の高周波カテーテル心筋焼灼術では、一回の通電で数ミリ程度の幅でしか焼けないため、静脈の入口部をリング状に焼くには何十回も通電する必要がある。体外からカテーテルを差し込む回数も多くなって時間がかかり、患者負担が大きいのが難点だった。

 今回の手術では、高周波ホットバルーン法の開発者である葉山ハートセンターの佐竹修太郎副院長の指導のもと、4月1日に保険治療として3人の患者を対象に実施した。その結果、手術時間は従来の高周波カテーテル心筋焼灼術に比べ約3分の2程度で済んだ。将来的には半分にまで短縮できると手術にあたった青沼和隆教授らは期待している。

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