カドミウム汚染水田の実用的浄化技術を開発
:農業環境技術研究所/長野県農業試験場など

 (独)農業環境技術研究所は8月19日、長野県農業試験場、富山県農林水産総合技術センター、新潟県農業総合研究所、福岡県農業総合試験場、太平洋セメント(株)と共同で、土壌洗浄法によるカドミウム汚染水田の実用的浄化技術を開発したと発表した。
 重金属の一種であるカドミウムは、自然界に広く分布している。日本では、食品からのカドミウム摂取が健康に及ぼす影響は低いが、さらに摂取量を減らすことが望ましいと考えられている。そのためには、平均して日本人のカドミウム摂取量の半分近くを占めるといわれるコメのカドミウム濃度を減らすことが重要とされている。
 コメのカドミウムの濃度を減らす方法として、これまでは主に汚染されていない山土などの土壌を他の場所から運び入れ、在来の土壌に混入する客土という対策がとられていた。しかし、この方法は、コストが高い上に、客土に用いる土壌を確保するために自然に影響を与えるという環境上の問題もあった。
 土壌洗浄法は、重金属の除去効率が高く、短期間で浄化が可能という長所があるが、これまでの研究では薬剤による土壌への影響があることや、洗浄後の排水処理の問題などが難しく、実用化には至らなかった。
 今回、共同研究グループは、カドミウムに汚染された水田に酸化鉄を洗浄剤として加え、カドミウムを水中に溶出させて除去する新しい「土壌洗浄法」の技術を開発し、実際の水田において現地試験を行った。
 その結果、排水処理装置を通った処理水のカドミウム濃度は、環境基準値の10分の1以下になった。また、洗浄処理によって水田土壌のカドミウム濃度は、60~80%程度低下し、生産される玄米中のカドミウム濃度も70~90%程度低下した。
 洗浄剤として用いる塩化鉄の必要量などにもよるが標準的な費用は、10アール(1アールは100㎡)当たり約200万円、間接経費を含めても同300万円で、客土費用(300~600万円)と比べてもコストの削減が可能になる見通しがついた。
 来年2月末日から適用される食品衛生法に基づく「食品、添加物等の規格基準の中のコメに含有するカドミウム、およびその化合物についての基準」が、現行の「1.0mg/kg未満」から「0.4mg/kg以下」になるため、今回開発された土壌洗浄法は、新たな基準をクリアするための対策の一つとして期待される。

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