インターネット衛星「きずな」使い航行している船舶からの高速通信に成功
:宇宙航空研究開発機構/海洋研究開発機構

 (独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)と(独)海洋研究開発機構は8月18日、JAXAの超高速インターネット衛星「きずな」(WINDS)を使って航行中の船舶からハイビジョン映像を陸上にリアルタイム(実時間)で高速伝送し、現用の船舶通信の10倍以上の高速通信を行うことに成功したと発表した。
 この実験は、両機構が昨年度から実施している共同研究プロジェクト「WINDSを利用した深海探査機映像の伝送実験」の一環として東京海洋大学の協力を得て行われた。
 「きずな」は、2008年に打ち上げた重さ約2.7tの静止衛星で、一般の家庭でも超高速双方向通信が行えるようにすることを目指している。
 今回の通信実験は、「きずな」用小型アンテナを海洋研究開発機構の海洋調査船「かいよう」に設置し、「かいよう」搭載の深海無人探査機で撮影した海中ハイビジョン映像などを航行している「かいよう」船上から高度約36,000kmの静止軌道上にある「きずな」経由で、つくば市(茨城)のJAXA筑波宇宙センターにリアルタイム伝送するというもの。航行中の船舶は、前後左右に揺れるが、東京海洋大学が開発した動揺安定台を導入して船の揺れを吸収し、アンテナの向きを一定に保つようにした。
 伝送したのは、海中ハイビジョン映像1チャンネルのほか、標準画質映像3チャンネル、「かいよう」船上のハイビジョン映像1チャンネルの合計5チャンネルの画像情報で、これを最大毎秒37メガビット(1メガビットは100万ビット)の映像伝送速度でリアルタイム伝送することに成功した。
 日本近海で船舶に提供されている既存の商用衛星による通信サービスの伝送速度は、最高でも毎秒3メガビットなので、その10倍以上にあたる。
 海上でもブロードバンド通信のニーズが高まっている。「きずな」を使えば商船などへのブロードバンドインターネット回線の提供が可能になることを示したといえる。

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超高速インターネット衛星「きずな」のイラスト(上)と、海洋調査船「かいよう」上の通信実験に使った小型アンテナ(提供:宇宙航空研究開発機構)