筑波大学と(財)高輝度光科学研究センターは8月16日、カリウムやナトリウムなどのアルカリ金属イオンを加えると、光学的な特性などが可逆的に変化する物質を見つけたと発表した。新しいタイプのメモリー開発などが期待できるという。
新機能を持つこの物質は、窒素、炭素、鉄、コバルトなどからなるシアノ錯体。1千万分の5mmの小さな隙間が格子状に規則正しく並んだ化合物で、塩化ナトリウム水溶液に浸すとその隙間にナトリウムイオンが入り、塩化カリウム水溶液に浸すとカリウムイオンに置き換わる。それに伴い、錯体格子の構造が可逆的に変わり、この変化に合わせて試料の色や光学特性などが変わる。
小さな隙間が密にある多孔質な化合物は、その隙間にイオンや分子を取り込み、有用な機能を発現することが知られている。研究チームは今回、隙間へのイオンの貯蔵に留まらず、取り込む物質の種類などによって母体物質そのものの性質を可逆的に変えることに成功した。大型放射光施設「SPring-8」の高輝度X線を用いた構造解析などに基づく成果という。
可逆的な対称性変化を利用すると、イオンの種類や個数で情報を記録するといった新しいタイプの記憶素子への道が開ける。ただ、今回の現象がどうして起こるのか分かっていないため、当面はその解明を目指すという。
No.2010-32
2010年8月16日~2010年8月22日