[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

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近赤外光で発電する 無色透明な太陽電池

(2026年10月01日)

 太陽光で発電する太陽電池は、可視光(波長400-780 nm(ナノメートル、1nmは100万分の1mm))だけで発電しているわけではありません。赤い色のすぐ外側にある少し波長の長い近赤外線(780~2,500nm程度)の領域でも発電しています。近赤外線は人間の目では知覚できませんから、可視光を透過させ、近赤外光のみを吸収する材料があれば、透明な太陽電池ができるというわけです。

 この課題に挑んだのが、⼤阪⼤学 産業科学研究所の横⼭ 創⼀ 助教・家 裕隆 教授、同⼤学院 ⼯学研究科、東京⼤学物性研究所、⻘⼭学院⼤学理⼯学部、artience株式会社らの共同研究グループです。同グループは、近赤外光で発電できる無色透明な有機太陽電池(OSC: Organic Solar Cell)の開発に成功しました。有機太陽電池とは、一般的な太陽電池のようなシリコンではなく、有機化合物を発電に用いる太陽電池で、軽くて薄く、曲げることができるので、曲面に貼り付けることができるというシリコン太陽電池にはないメリットがあります。

 研究グループは、以前から有機半導体材料の構造と電⼦状態を精密に制御することによって、可視光をほとんど吸収せず、近⾚外光のみを選択的に吸収する分⼦設計指針を⾒出していましたが、このたびこの設計指針をもとに、強い分⼦内相互作⽤を誘起する新規ユニットを設計し、これを分⼦内に組み込むことで、可視光を透過しながら近⾚外光を吸収する新しい材料を開発しました。

 また、今回開発された分子材料は、近赤外光を吸収した後、電荷を生じやすく、効率よく薄膜内を輸送できることもわかりました。そのため、この分子を発電層に組み込んだ太陽電池は、近赤外線領域のみで最大20%を超える外部量子効率が確認されたといいます。これは、100個の光子が当たった場合、電子が20個取り出せるということです。

 この技術が実用化すれば、建物の窓ガラスを太陽電池として使うことができますから、外観を損なうことなく発電できます。また、近⾚外光を⽤いた脈拍検出にも成功しており、ウェアラブル端末としても期待されています。

(提供:大阪大学 産業科学研究所 家教授)

 

【参考】
■大阪大学プレスリリース
見えない光で発電する 無色透明な太陽電池を開発

 

サイエンスライター・白鳥 敬(しらとり けい)
1953年生まれ。科学技術分野のライター。月刊「子供の科学」等に毎号執筆。
科学者と文系の普通の人たちをつなぐ仕事をしたいと考えています。