安全性の高いiPS細胞の提供体制を構築
―期待される関連研究の加速
:理化学研究所/ディナベック

 (独)理化学研究所とディナベック(株)は8月23日、センダイウイルスベクターを用いて作製した安全性の高いiPS細胞(人工多能性幹細胞)を国内外の大学や研究機関が柔軟に活用できる仕組みを構築、同日付でiPS細胞の提供を開始したと発表した。
 センダイウイルスベクターは、iPS細胞をつくる際に、遺伝子操作によって導入する遺伝子の運び屋(ベクター)で、これまでのベクターとは違い染色体を傷つけたり遺伝子機能を変化させたりする、いわゆる遺伝子毒性が基本的になく、がん化のリスクの少ないiPS細胞を作ることができる。
 国内の製薬会社やベンチャーキャピタルなどが出資して2003年に設立したバイオベンチャーのディナベックは、独自開発したこの技術の基本特許を持ち、日米欧中を含む世界の主要各国で独占的な実施権を有している。
 理研は、生物遺伝資源(バイオリソース)を扱う理研バイオリソースセンター(理研BRC)を2001年に設立、実験動植物や細胞材料、遺伝子材料、微生物材料とその関連情報を収集、提供する活動を展開している。
 今回、理研BRCとディナベックは覚書を交わし、国内外の研究者がセンダイウイルスベクターを用いて作製したiPS細胞を、国内外の大学や研究機関は非営利の学術研究に限ってディナベックにライセンス料を支払うことなしに理研BRCから提供を受けられるようにした。あわせて、大学や研究機関がセンダイウイルスベクターを用いて作製したiPS細胞を理研BRCに寄託できるようにした。
 これまではディナベックの特許技術を用いて作製したiPS細胞を学術研究目的ではあってもライセンス料を払わずに他の研究者に渡すことはできなかった。今後は作製されたiPS細胞が研究室に死蔵されることが減り、関連研究の加速が期待できるとしている。

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