(国)産業技術総合研究所は8月12日、衣類のように柔らかく、洗濯しても壊れないトランジスタを開発したと発表した。人体の形状に添い自在に変形するので、ストレスなく健康状態を計測する医療用モニタリングなどへの応用が期待できるという。
■伸縮や曲げ、ねじり、圧縮などの負荷にも壊れず

ハイヒールに踏まれるトランジスタと右は、踏まれる前後の性能(提供:(国)産業技術総合研究所)
開発したトランジスタは、単層カーボンナノチューブとゴム、ゲルといった柔らかい炭素系材料だけでできており、金属やシリコン酸化物のような硬い材料は一切使っていない。
トランジスタの中核部は半導体的性質を持つ単層カーボンナノチューブ、電極部は伸縮部性のある導電性の単層カーボンナノチューブとゴムの複合材料、絶縁層はイオンゲル、基板はシリコンゴムから成る。
トランジスタの特性を示すオン電流・オンオフ比は従来のフレキシブルトランジスタと同等の性能で、柔らかさの指標となるヤング率、丈夫さの指標となる許容弾性ひずみ量はともにプラスチックを上回り、布類とほぼ同程度。また、伸縮や曲げ、ねじり、圧縮などさまざまな負荷をかけても壊れず、ハイヒールで踏んでもトランジスタの特性にはほとんど変化が見られないという。
研究グループは今後、柔らかいセンサーなどと組み合わせて、身体に負担をかけない衣類のように身に着けることができるヒューマンマンモニタリングシステムを作りたいとしている。